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部屋を飛び出した高杉は三津を探して藩邸内を駆け回る。
「サヤさん!三津さんどこや?」
「三津さんなら浴場のお掃除してはりますよ。」
「おう!ありがとう!」
庭先の掃除をする手を止めて教えてくれたサヤに手を振って浴場に向かった。
「三津さん!話がしたい!」 魚尾紋消除
裾を捲し上げてしゃがみ込んで掃除をしていた三津は,高杉の勢いにビクッと肩を跳ねさせて口を半開きにして高杉を見上げた。
「お話?今?」
「今!あと人には聞かれたくないけぇ二人きりになれるとこはないか?藩邸内は誰が聞き耳立てちょるか分からん。」
「それなら藩邸出てすぐの河原なら……。今度は何が気になったんです?」
本当に思い立ったらすぐ行動なんだなと苦笑した。掃除を終わらすから待ってと言い聞かせててきぱきと掃除を終わらせた。
「聞かれちゃいけんけぇ静かに出るぞ。」
三津の手を引いて挙動不審にあちこちに視線を向けながら廊下を歩いた。
『ふざけてるのか真面目なんかどっちなんやろ。』
とりあえず付き合って気が済むのならそうするしかない。
「今度は何やらかしはるんやろ。」
忍び足で廊下を進む高杉と三津を,サヤは庭先からくすくすと笑って眺めた。
「すぐ戻るけぇ桂さん達には言うなよ!」
門番をしていた藩士に高杉はビシッと指を差して忠告して,さぁ河原に行けと三津に指示した。
「今度は何のお話ですか?」
「三津さんは稔麿庇って怪我したそ?」
「あぁ……。しましたね。新選組に捕縛されて拷問受けたんですよ。その話ですね?」
高杉は激しく首を縦に振った。
「桂さんは言葉を濁したそっちゃ。じゃけぇその話は本人以外が口にしちゃいけんような内容なんやろなって。」
『高杉さんなりに考えてはるんや……。』
「分かりましたお話しますよ。」
三津と高杉は河原に並んで腰を下ろした。
「拷問って……何されたん?」
「えっと殴られて蹴られて水の入った桶に顔浸けられたり……。途中から気絶しちゃって気付いたら斎藤さんの部屋で手当て受けてたんで覚えてたのは少しだけ。」
「怪我の程度は……。」
「左腕と肋骨が何本か折れてたみたいです。あとは口の中噛み切ってたのと全身痣だらけ。」
結構痛かったんですよと三津はへらへら笑った。高杉はまっすぐな目で三津を見ていた。
「誰がやったそ。それは。」
三津は眉を垂れ下げ困ったように笑った。
「土方さんです。副長さん。
元々その人に恩があって向こうの女中してたんですけどね。」
そしたら土方さんの女だと勘違いされて新選組に恨みのある奴らから命を狙われるわ,今度は土方に追われてた吉田を庇った事で長州の間者と疑われるわ。
でも長州の人間と分かっていながらその事実を隠して相反する者同士の間にいた自分の自業自得なんだが。
そう言って力なく笑っていると高杉の手が三津の頭に乗っかった。そして勢い良く撫で始めた。
「ありがとう!恩にきる!稔麿を助けてくれてありがとう!」
相変わらず顔は真顔で三津にはどんな感情を持って今こうしているのか理解出来なかったが感謝の言葉に照れ臭そうに笑った。
「稔麿が三津さんを危ない目に遭わせたくないって言うのがよく分かった。
責任感じちょるんやろなぁ稔麿。」
「ですよねぇ。もういいのに。こうやって生きてるんやし。」
「いやぁそりゃ一生あいつの中に残るやろ。好きな女子をそんな目に遭わせたんやけ。」
三津がしゅんとしてしまったのに気付いて言葉を続けた。
「でも三津さんが気にする事やない。それは稔麿が戒めとして背負ってくもんや。
三津さんは稔麿を救ったんやけ胸張ったらええそ。
稔麿は二度と同じ事せんように自分に刻み込むだけじゃ。」