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「三津さん一旦綺麗な景色でも見てその目の穢れた記憶を消しておいで。赤禰さん,高杉の処分は私がしますので三津さんを海に連れてってあげてください。」
「おう……。」
腕がなるわぁと嬉しそうな文を見て赤禰は高杉の命はないなと確信した。そんな現場をフサに見せていいものかとフサも海へ誘ってみたが,
「姉上にそんな穢らわしいモノを見せた罪人の最期を見届けねばなりませんので。」
と断られた。魚尾紋消除 顔には出てないが相当怒ってるんだなと赤禰は理解した。
そして両目を押さえてシクシク泣いてる三津の肩を抱いて屯所を出ようとして門の所でまた厄介な人物と出くわした。
「赤禰君,三津の肩なんか抱いて何処へ行くんだい?」
「桂さん……いや,これには理由が……。」
「小五郎さん?今度は目が穢されました……。」
両手を外して桂を映した両目からぼたぼた涙が零れた。桂は三津の頭を撫でてどうしたと事情を聞いた。
「高杉の馬鹿が三津さんに自分の粗末なモンを見せつけたようで。なので今から海を見せて目を浄化しようと……。」
「は?そんなモノすぐに斬り落としてやる。赤禰君晋作は何処だ。」
「縁側の方で今文ちゃんから裁きを受けてるかと……。」
「分かった。赤禰君は三津を海に連れて行きなさい。」
桂は物凄い速さで屯所の中に消えて行った。「晋作!晋作は何処だ!?」
「桂さんか!?助けてくれっ!!死ぬ!俺死ぬっ!!」
高杉の悲痛な叫びが聞こえた方へ駆けつけると,
「頼むから命だけはっ!!」
高杉は文に羽交い締めにされ襷掛けに鉢巻までしたフサに長刀を突きつけていた。その脇には下帯一枚で正座させられている入江もいた。
「あっ桂様おかえりなさいませ。今手が離せませんのでしばしお待ちを。」
フサは真顔で一度桂を見たがすぐに標的を見据えた。その立ち姿はかなりの手練と思わせる雰囲気だ。
「ごめんって!ごめんってぇ!」
「煩い。潔く逝け。三津さんにまで汚いミミズ見せやがって。」
「誰がミミズじゃ!アオダイショウやろが!」
この高杉を羽交い締めで逃さない文はどれだけ力があるんだろうか。
いや,今はそんな事を考えてる場合ではない。長州の要人が女子二人に殺されかけているのは見過ごせない。
「……文ちゃんフサちゃん,晋作には私から罰を与えるから一旦二人は離れようか。女子が血に汚れることは無い。それと九一,お前も共犯でいいんだな?」
「私は隣りで体拭いちょっただけです……三津に聞いてもらったら分かるけぇ助けてください……。」
大人の男が年下の女子に下帯一枚で正座させられてるだけでも屈辱なのにと泣きそうだった。
桂から言われるならそうせざるを得ない。二人は不服そうに高杉から離れて舌打ちをした。
「あ!入江さんに高杉さんまだこんなとこで遊んじょる!さっさと湯浴みしてきなさい!!」
入江と高杉には天の助け。セツが二人を呼びに来た。正確にはセツも説教に来たのだが二人はこれ幸いと着物を持ってすたこら逃げた。
「文ちゃん,つかぬ事を聞くが君も晋作の粗末なモノを見せられたのかい?」
「あいつが塾生やった時,まだ主人と夫婦になる前にお前は醜女やけぇ男の経験ないやろうから指南しちゃると全裸で迫られた事が。」
「うむ,特段厳しい罰を与えておく。」
「痛み入ります。では三津さんを慰めに行ってあげてくださいね。早くしないと赤禰さんに持って行かれますよ。」
文とフサはではと頭を下げて夕餉の支度に戻って行った。
そして桂は急いで今度は海へ向かった。
海岸へ行くと岩場に腰を掛けて,目……私の目が……と泣く三津の背中を赤禰が擦っているところだった。
「三津さん桂さんが迎えに来てくれたけぇ戻ろうか。」
桂に気付いた赤禰は三津の背中をぽんぽんと叩いて後ろ後ろと桂の方を指差した。
振り返った三津は桂の顔を見てふんわり笑った。